タイの3大陶磁器と呼ばれる「ベンジャロン焼き」、「セラドン焼き」、「ブルー&ホワイト」。
中でも「ベンジャロン焼き」は、王室専用に作られていた、最も高貴な陶磁器でした。
「ベンジャロン」とは、サンスクリット語で「5色」の意味を表し、赤、青、黄、緑、白の5色を使った焼き物でしたが、今では30色以上の色が使われています。
24金で縁取りされ、鮮やかな色彩と緻密な図柄が特徴の「ベンジャロン焼き」は、花や草、炎などが描かれ、「ワット・プラケオ」など、お寺の壁や柱などで見られる文様がそのまま使われているものもあります。
今回は、タイの伝統工芸品である、ゴージャスな「ベンジャロン焼き」の特徴をご紹介したいと思います。
目次
「ベンジャロン焼き」の歴史
アユタヤ王朝時代の16世紀末から17世紀前半に作られた「ベンジャロン焼き」は、中国より伝わった白い磁器に多色の絵具を焼き付ける技法で作られた陶磁器です。
その時代のタイ国内には、まだ製作環境が無かった為、国王は職人を中国へと派遣し、そこで製造したものをタイ王室御用達として輸入していました。
当初は24金を使わないシンプルなものでしたが、今から200年ほど前のラーマ2世(1809-1824)の時代に、タイ国内で「ラーイ・ナーム・トーン(タイ語でラーイは文様、ナームは水、トーンは金という意味)」と呼ばれる、金の縁取りを施した豪華絢爛なスタイルを確立し、王室専用の陶磁器として作られるようになりました。
その後、「ベンジャロン焼き」は王室だけでなく、貴族・商人の家庭にも広まり、タイを代表する高級磁器になり、人々に親しまれています。
現在では、宮廷料理レストランで食器やソーサーとして使われたり、壺や置物などの装飾品は、名門ホテルや高級レストランに飾られています。
「ベンジャロン焼き」の特徴
1.図柄は左右均等を守り、緻密に描かれています。
2.伝統的なタイ模様の花、稲穂、炎などのモチーフを使います。
3.24金を使って縁取りします。
「ベンジャロン焼き」の文様パターン
「PIKUL」ピクル
「PIKUL」は、「ワット・プラケオ(王宮)」など、お寺の壁や柱などで見られる文様です。
その文様を小さくしたものが「ベンジャロン焼き」にも使われています。
「PIKUL」文様は、悪霊から身を守ってくれると共に、永遠の平和と繁栄をもたらすと信じられており、「幸福をもたらす文様」とも言われます。
「PIKUL」の花はタイのお寺の境内などで見られ、ジャスミンのような甘い香りがし、白くギザギザとした花びらが特徴的です。
タイでは幸福と繁栄の木と伝えられていますので、人の名前や、学校の校花などに使われる事もあります。
「CHAKRI」 チャクリー
「CHAKRI」は、可愛らしい「ヒナギクの花」をモチーフにしています。
昔から伝わるスタイルでは、花びらは白く、花粉(雌しべ)の部分は赤く描かれています。
絵付師は、葉の周りに、花びらと雌しべを強調し、目立つように描きますので、花びらと雌しべが立体的に見えるのが特徴です。
現代風にアレンジされたものは、基本の配色以外の色を使って自由に表現しているものもあります。
また、この文様は、ラーマ5世(1868-1910)の時代に生まれ、広まりました。
ラーマ5世は、この文様にCHAKRI(チャクリー)という、ラーマ1世の時代から現在まで続く「チャクリー王朝」の名前を使用することを許し、自ら使用する以外にも、重要な式典の記念品として王族、貴族や招待客に配る為に、作らせていました。
「PHUM KAO BIN」プンカオビン
「PHUM KAO BIN」は、ラーマ5世の時代に生まれ、金色の線で四角く区切られ、タイの人達の主食でもあり、宗教的儀式にも使われる「稲穂」をモチーフとした格子模様です。
元は宮殿など、王室関係者のみに使われていた、タイの象徴的な文様で、非常に経験と技術を持った職人でなければ、正確且つ繊細に描くことは出来ないと言われています。
王族や貴族の為の器だった「ベンジャロン焼き」
いかがでしたか?
かつて王族や貴族の為の器だった「ベンジャロン焼き」は、現在でも高級品として扱われる陶磁器です。
表面を手で触ると、模様が盛り上がっていますので、一つ一つハンドペイントされている事が分かり、職人の技が感じられます。
もしお店で「ベンジャロン焼き」を見かけたら、是非、眺めてみて下さい。
気に入った物があれば、自分土産として購入してみても良いですね。